現代生活において、私たちはさまざまな室内環境に影響を受けています。特に室内の空気の質は、日常の快適さや健康に大きく関わっています。窓を開けるだけでは解決しきれない、見えない敵―ホコリ、花粉、カビ、そしてペットの毛やタバコの煙ー。これらの有害物質が、あなたの室内に潜んでいるかもしれません。
小さなお子様やご高齢者がいるご家庭では特に注意が必要です。上記で挙げた有害物質は床上30cmでその多くが停滞すると言われています。そう、赤ちゃんが寝転んだりハイハイしたりする高さです。一般的に「赤ちゃんや高齢者の方は成人よりも免疫力が低く、ウイルスなどに感染すると重症化の恐れがある」といわれます。
室内環境の有害物質を排除して「もっと空気をきれいにしたい」「自分自身や家族の健康を守りたい」と思いませんか?そこで役立つのが空気清浄機です。本当に効果があるのか、その仕組みはどうなっているのか。この記事では、空気清浄機の仕組みと技術について詳しく解説します。
空気清浄機とは
空気清浄機は、室内の空気をキレイにし、呼吸器系の健康を守るために重要な役割を果たします。空気中にはホコリや花粉、カビの胞子、ペットの毛、フケ、タバコの煙など、目には見えずとも健康に悪影響を与える物質が数多く存在します。
これらの有害物質が呼吸器系に悪影響を及ぼすリスクを軽減し、清潔で健康的な室内環境を保つことができるのが空気清浄機です。
【参考情報】
『居住環境におけるアレルゲン・ダストに対する空気清浄対策』エアロゾル研究13(1),5-12(1998)(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/13/1/13_1_5/_pdf/-char/ja)
空気清浄機の種類と仕組み
空気清浄機はその動作原理や機能によっていくつかの種類に分かれます。以下に代表的なタイプの空気清浄機の仕組みと、それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。
なお、現在国内で販売されている家庭用空気清浄機の主流はファン式ですので、「電気集塵式」と「イオン方式」については参考程度とお考えください。
1. ファン方式(機械式)空気清浄機
ファン方式の空気清浄機は、空気を強制的に吸い込み、複数のフィルターを通過させることで汚れや臭いを除去します。現在販売されている家庭用空気清浄機はほぼこのタイプで、内部には以下のフィルターが含まれています。
プレフィルター:大きなホコリや塵を捕集し、後続のフィルターを保護
集じんフィルター:目に見えない微細な粒子(花粉やPM2.5など)を捕集/HEPAフィルター※が主流で、特に微細な粒子の除去に効果的
【参考情報】『住居とアレルギー疾患』東京都福祉保健局(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/indoor06.pdf)
脱臭フィルター:活性炭や光触媒を使用して臭いを分解し、空気を清浄化
※HEPAフィルターとは※
JIS規格(JIS Z 8122)で「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有しており、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と規定されています。
HEPAフィルターは、直径1~10μm以下のガラス繊維ろ紙で、何重にも蛇腹式に折りたたんだ状態になっています。
ファン方式空気清浄機の動作原理
ファンが空気を吸い込み、プレフィルターで大きな汚れを除去し、次に集塵フィルターで微細な汚れを捕集します。最後に、脱臭フィルターを通過させて臭いを取り除いた後、浄化された空気を部屋に戻します。この一連のプロセスにより、空気中の有害物質を効果的に除去します。
高い集塵能力を持ち、特にHEPAフィルター搭載機種は微細な粒子の除去に優れています。本体サイズがコンパクトで家庭用に適しており、部屋に置いても威圧感がありません。この方式は国内大手メーカーの主流な方式となっています。
2. 電気集塵式空気清浄機
電気集塵式空気清浄機は、静電気を利用して空気中の粒子を捕集します。空気中の粒子をプラスに帯電させ、マイナスに帯電したフィルターに引き寄せることで、汚れを除去します。大まかな流れは次のとおりです。
プレフィルター:大きなホコリや塵を捕集
イオン化部:高圧放電でホコリや塵・煙の粒子などをプラス(+)に帯電
集じんフィルター:マイナス(-)極性を持たせた集塵フィルターで吸着
脱臭フィルター:活性炭や光触媒を使用して臭いを分解し、空気を清浄化
電気集塵式空気清浄機の動作原理
プレフィルターで大きな汚れを除去し、次に高圧放電によりチリ・ホコリや煙の粒子をイオン化部でプラス(+)に帯電します。その後、マイナス(-)極性を持たせた集じんフィルターで捕集します。最後に、脱臭フィルターを通過させて臭いを取り除いた後、浄化された空気を部屋に戻します。この一連のプロセスにより、空気中の有害物質を除去します。静電HEPAフィルターを使用している製品もあります。
フィルターの目詰まりが少なく、洗浄することで繰り返し使用できるため、ランニングコストを抑えられます。そのため、フィルターを交換する必要がなく電気集塵式は、特に長期間の使用に向いています。
3. イオン方式空気清浄機
イオン方式の空気清浄機は、空気中にイオンを放出し、微粒子やウイルスを無力化します。期待できる効果は下記のようなものが挙げられます。また、ファンを使用しないモデルが多いため、静音性が高いのが特徴です。
■浮遊ウイルス・菌・アレル物質の作用を抑制
■浮遊カビ・付着カビ菌の増殖を抑制
■タバコ臭・ペット臭・生ごみ臭などのニオイを分解・消臭
イオン方式空気清浄機の動作原理
イオンを空気中に放出・拡散し、浮遊している汚れの微粒子に付着することで、粒子の活動を抑制して空気を浄化します。放出されるイオンなどの呼び方や発生方法はメーカーによりさまざまで「パナソニック:ナノイー」「シャープ:プラズマクラスター」「ダイキン:ストリーマ」などが代表的です。
構造がシンプルで、製品価格が低めに設定されています。また、ファンを使用しないため、運転音が非常に静かです。
現在は、イオン方式のみを採用した空気清浄機はほとんどなく、ファン方式と組み合わせた空気清浄機が大半であり主流となっています。
空気清浄機でアレルゲン対策
家の中に潜む代表的なアレルゲン
家の中には、目に見えないアレルゲンが多く潜んに浮遊していることが多く、喘息などの呼吸器系の健康に影響をでおり、これらは空気中与える可能性があります。まず、この章では部屋の中に潜む代表的なアレルゲンを紹介します。
ダニ
ダニは、温かく湿った環境を好み、布団やカーペット、畳の中に生息しています。ダニの死骸やフンは、微細で目に見えませんが、強力なアレルゲンとして作用します。
カビ(真菌)
カビは、湿気の多い場所で繁殖しやすく、空気中にはその胞子が漂っています。これらの胞子を吸い込むことで、アレルギーや呼吸器系の症状が悪化することがあります。
花粉
スギやヒノキ、ブタクサなどの植物から発生する花粉は、外部から室内に持ち込まれ、室内でもアレルギー反応を引き起こすことがあります。
ペットの毛やフケ
犬や猫、鳥などのペットの毛やフケは、アレルギー反応を引き起こすことがあります。これらは空気中に漂い、健康に悪影響を与えることがあります。
タバコの煙
タバコの煙には、アレルギーを引き起こす化学物質が含まれ、呼吸器系に対しても刺激を与えます。これらの化学物質は、タバコの火を消した後でも有害な成分を放出し続けています。
【参考情報】『受動喫煙防止のために空気清浄機を置いたんですけど..』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/nosmoking/think/caution.html
空気清浄機があれば、これらのアレルゲン除去に効果を発揮します。また、アレルゲンの除去のみではなく、室内の空気をクリーンに保ち、呼吸器系の健康を守るために非常に有効です。
空気清浄機の効果
アレルゲンの除去
空気清浄機は、空気中に浮遊するアレルゲンを効果的に除去することができます。例えば、ダニの死骸やフン、カビの胞子、花粉、ペットの毛やフケなどが含まれます。これらのアレルゲンは、敏感な方にとってはアレルギー反応を引き起こす原因となるため、空気清浄機を使用することで、快適な生活環境を維持できます。
悪臭の除去
空気清浄機は、空気中の嫌な臭いを吸着し、取り除く効果も持っています。これには、ペットやタバコの臭い、料理の際に発生する臭いや生ごみのニオイなどが含まれます。脱臭フィルターを備えた空気清浄機を使用することで、室内の空気が常に新鮮で快適な状態に保たれます。
微細な粒子の除去
HEPAフィルターを搭載した空気清浄機は、PM2.5などの微細な粒子を捕集することで、空気中の有害物質を除去します。PM2.5は、工場の排煙や車の排気ガスなどから発生する微粒子で、健康に悪影響を及ぼすことが知られています。HEPAフィルター搭載の空気清浄機であれば、これらの微細な粒子を高い確率で捕集し、室内の空気を清浄化できます。
ウイルスや細菌の減少
最新の空気清浄機には、ウイルスや細菌を不活性化する機能が備わっているものもあります。例えば、UV-Cライトやナノイー・ストリーマ・プラズマクラスター技術などを使用することで、空気中に漂うウイルスや細菌を減少させることが可能です。これにより、感染症のリスクを低減し、家族全員が安心して過ごせる環境を作ることができます。
これらのアレルゲンから自分や家族を守るために、空気清浄機は非常に効果的です。ぜひこの機会にご検討ください。機能やデザイン、適応畳数などさまざまな空気清浄機が販売されています。お好きなショッピングモールでチェックできます。下記よりチェックしてください。
空気清浄機の技術トレンド
空気清浄機の技術は日々進化しています。
以下は、空気清浄機の進化や技術トレンドの一部です。
1. HEPAフィルターの進化
最近では、HEPAフィルターに抗菌機能を追加する技術が進化しており、フィルター自体の清潔さを保つことができる製品も登場しています。また、ナノレベルの粒子まで捕集できる「ULPAフィルター」も開発され、特定の環境ではさらに高い効果が期待されています。
2. スマート空気清浄機の登場
インターネット接続機能を持つスマート空気清浄機が登場し、スマートフォンからリモートで操作したり、部屋の空気質をリアルタイムでモニタリングできるようになっています。これにより、使用者は空気の状態を即座に確認し、必要に応じて調整することが可能です。
3. 空気清浄機とウイルス対策
新型ウイルス対策として、空気清浄機にUV-Cライトやナノイー・ストリーマ・プラズマクラスター技術など搭載し、空気中のウイルスを不活化する技術が注目されています。この技術は、病院や公共施設など、人が多く集まる場所での使用も推奨されています。
まとめ
空気清浄機は、空間をキレイな空気にすることはもちろん、呼吸器系の健康を守るための重要なツールです。特に、HEPAフィルターを搭載した製品は、ダニの死骸や花粉、カビの胞子などの微細な粒子を効果的に捕集し、室内の空気を清潔に保つことができます
【参考情報】『Air filters and air cleaners: Rostrum by the American Academy of Allergy, Asthma & Immunology Indoor Allergen Committee』National Library of Medicine
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2824428/)
また、最新の技術を活用したスマート空気清浄機やウイルス対策機能を持つ製品も登場しており、選択肢が広がっています。適切な空気清浄機を選び、定期的なメンテナンスを行うことで、より良い室内環境を維持し、呼吸器系の健康を守りましょう。