「免許返納」から始まる、新しい移動手段探しの物語②
高齢の父が、運転免許の返納を決断しました。
——85歳での新たな挑戦——
免許返納後の移動手段として二輪スクーターに挑み、挫折を経験した第一話。
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第一話でもお話ししましたが、父のクルマは一括査定サイトを利用して売却しました。店頭での査定よりもかなり良い価格で手放すことができたのは大きな収穫です。クルマの売却を検討している方は、まず査定を試してみるだけでも参考になると思います!
今回の第二話では、父が次に挑戦した「三輪バイク」に焦点を当て、その挑戦と新たな壁について物語調でお届けします。高齢者の移動手段を模索する方に向けた、私たち家族の体験談です。特に地方で一人暮らしをされている高齢の家族がいる方は心配が尽きないですよね。車がないと生活が不便だけど、運転を続けるのも不安が残る…。そんな心配をお持ちの方へ、参考の一助となれば幸いです。
第五章:三輪バイクへの挑戦
二輪スクーターを諦めた父が次に挑戦したのは、三輪の原付バイク。倒れなさそうで、安定感があると考えたからです。※画像は購入したバイク※(納車時はサイドミラーと別注文したウインドスクリーンも取り付けられています)
家族としても「これなら大丈夫かもしれない」と期待しました。
三輪バイクを選んだ理由|次の挑戦への希望
父が選んだのは、ホンダ ジャイロX。中古で購入した車体はホワイトで、風防も別注文して取り付けてもらいました。こちらを選択した主な理由は次の3点です。
①原付免許で乗ることができる
②安定感があって転倒しにくそう
③父が三輪バイクに意欲的だった
これなら乗りやすそうだ
と父も前向きな様子でした。
父は車体をしばらくの間、じっと車体を眺めていました。
実際に跨ってみても、
これは安定しとるばい
と感心した様子で、二輪スクーターでは感じられなかった安心感を得たようでした。家族も「これなら本当にいけるかも」と安堵したのを覚えています。
三輪という構造への期待と、原付免許という制約の中での選択肢として、ホンダ ジャイロXは父にとって “次の希望” となりました。
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JAFでは原付バイクもロードサービス(救援)の対象となっています。父は自動車を運転していた頃からJAF会員だったため、その点は少し安心感がありました。特に、バッテリー上がりなどのトラブルは誰でも慌ててしまうものです。慣れない乗り物であれば、なおさら困惑することでしょう。いざという時の備えとして、JAFへの加入を検討してみてはいかがでしょうか。
練習開始|三輪の安定感に潜む難しさ
練習は、自宅近くの広場で始めました。広場までは私がバイクを運転しました。ここは十分な広さがあり、カーブや速度練習もできる環境です。周囲の安全にも十分な注意を払い、練習を開始。
父は、まず停止状態での安定感に驚きながら、
倒れなさそうでいい!
と少し自信をつけた様子でした。
しかし、ハンドルのロックを解除した瞬間、その感覚は一変しました。三輪バイクは確かに停止状態では安定していますが、ロックを解除するとフロント部分はフリーな状態になります。ハンドルロックの状態は自動車でいうところサイドブレーキを引いている状態と同じなので、停車時は安定しているのです。(正確には停車時ではなく、駐車時といった方が正しいですね)
おいおい、なんか不安定かばい💦
と、ロック状態との違いに苦笑いを浮かべていました。
また、二輪よりも幅があり、どっしりとしているため、押して動かすときも難しさがあります。
それでも父は
これも難しかばってん、しばらく練習するたい
と前向きに取り組んでいました。初日はバイクに跨ったり降りたり、押してみたり…。
数回の練習を重ね、直進については徐々に慣れてきたものの、スピードに乗ることはできません。そして、カーブでは依然として不安定な挙動が見られました。
なんか、思っとったよりも難しか…
と少し戸惑いながらも練習を続けました。
転倒|安定を求めたはずの挑戦で…
転倒は、練習を始めて数日後のことでした。父は自宅近くの広場でカーブの練習をしている最中、意図せず車体が内側に傾きすぎて倒れてしまったのです。幸い、父は軽く転んだ程度で大きなケガはありませんでしたが、重い車体を自力で起こすことはできず、私が駆け寄って父と車体を起こしました。
三輪なのに倒れるとは…
父は悔しそうにバイクを見つめていました。
それでも
よし!続けよう!
と言い、その場で再び三輪バイクに乗りました。
ところが、その日のうちに二度目の転倒が起こります。同じようにカーブで車体がバランスを崩し、再び転倒してしまったのです。二度目の転倒では、父が手のひらを擦りむいてしまい、
今日はもうやめようかね…
と、少しショックを受けた様子を見せました。その時の父の表情には、「これも難しいかもしれない」という迷いが浮かんでいるように見えました。
三輪バイクを諦めた理由|次への期待
数日間の練習と転倒を経験し、父は家族にこう話しました。
やっぱりこれで公道に出たら、自分も周りも危なかばい…
その言葉には悔しさというより、自分の限界を冷静に受け止める判断が込められていたように思います。私たち家族も「原付免許で乗る乗り物は難しいのではないか」と話し合い、父を交えて次の移動手段を模索することにしました。
その中で浮上したのが、四輪の電動シニアカーです。こういうタイプの乗り物です。
当初、私がシニアカーを提案したとき、父は「本当におじいちゃんみたいな乗り物はちょっと…」と少し抵抗を示していました。
※「シニアカー」と検索すると、手押し型のショッピングカートや電動車いすが混在して表示されることがありますが、本記事での「シニアカー」は乗り物としてのシニアカーを指しています。また、「セニアカー」という名称を聞くこともあるかと思いますが、これはスズキが商標登録している商品名です。「シニアカー セニアカーの違いは?」との疑問が浮かんでも、どちらも同じタイプの乗り物であるとご理解いただいて差し支えありません。
それでも、
安全で便利な移動手段はいるけんねぇ
と納得し、シニアカーの購入に向けて本格的に検討を始めたのです。
(第三話では実際に購入したシニアカーも紹介します)
【筆者コメント】
「高齢者の免許返納後におすすめの実話|いくつかの失敗と挫折を乗り越えて得た移動手段のはなし|第二話」をお読みいただきありがとうございました。
第一話でもお伝えしたように、私たちが思っている以上に、高齢者にとって乗り物というものは「体力消耗」「心理的な壁」「ケガのリスク」も伴うのだと実感しました。ただ、挑戦しようという姿勢には家族としても応援したいという気持ちで一丸となることができました。
次回の第三話では、そんな父が次に選択した「シニアカー」と、その中での挑戦と成功についてお話しします。その中でもいろいろなことが発生します。同じように高齢者の移動手段について悩んでいる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
それでは、第三話もぜひご覧ください。
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