これまで「加湿器の必要性とその効果」「加湿器のタイプ別メリット・デメリット」を前回・前々回の記事で紹介しました。加湿器の必要性や加湿器の種類(タイプ)をチェックしたい方は、是非これまでの記事もご覧ください。
今回は「加湿器の効果を最大化する設置場所」「お手入れ面から見る加湿器の選び方」について解説します。より快適に加湿器を使用するための参考にしていただければ幸いです。
加湿器の設置場所
加湿器をどこに置くかは、加湿の効果を最大限に引き出すために非常に重要な要素です。設置場所が適切でないと、加湿の効果が十分に発揮されないばかりか、逆にトラブルの原因になることもあります。ここでは、最適な設置場所について具体的に解説します。
なるべく部屋の中央付近
加湿器は部屋の中央に設置するのが理想的です。壁に近い場所に置くと、蒸気が壁に直接当たってカビの原因になることがあります。また、窓の近くに置くと蒸気が結露しやすく、湿度がうまく上がらないことも。換気扇や出入口付近では、湿気が外に逃げてしまうため、効果が低くなります。
【事例メモ】
ある家庭では、加湿器を窓の近くに置いていたため、結露が発生して窓枠にカビが生えてしまいました。その後、部屋の中央に設置場所を変更したところ、結露が減り、カビの問題も解消されました。さらに、部屋全体が均一に加湿されるようになり、家族全員が快適に過ごせるようになりました。
室内のレイアウトによっては部屋の中央に加湿器を置くことが難しい場合もあると思いますが、なるべく窓の近くは避けてください。また、換気扇の近くに設置するのもおすすめできません。加湿した蒸気が換気扇から外に逃げてしまい、効果が低下します。
ある程度の高さがある場所
冷たい空気は部屋の低い場所に溜まりやすいです。そのため、床に近い場所に加湿器を置くと、蒸気が冷やされて結露しやすくなり、床が濡れてしまうことがあります。設置する高さとしては、床から70〜100cmが理想的です。
【事例メモ】
加湿器を床に直接置いて使用していたHさんは、いつも床が濡れてしまうことに悩んでいました。加湿器を棚の上に移動させたところ、結露が減り、床も乾いた状態を保てるようになりました。加湿の効果もより効率的になり、部屋全体が適度な湿度に保たれるようになりました。
また、湿度センサー(加湿コントロール)機能付きの加湿器などを床に置いて使用すると、蒸気が部屋全体に広がる前に水蒸気が下降してしまいます。その結果、センサーが誤って加湿が十分だと判断し、加湿力を自動的にダウンコントロールしてしまうため、部屋全体が設定通りの湿度に達しない可能性もあります。
肌に直接当たらない場所
加湿器の蒸気が直接肌に当たると、短時間では潤いを感じるかもしれませんが、逆に肌が乾燥する原因になることもあります。原因は潤ったと感じた水分が蒸発するときに肌の内部にある水分も一緒に蒸発してしまうから。そうならないためにも肌に蒸気が当たらないよう、適切な距離を保ってください。
紙製のモノが近くにない場所
加湿器を紙製品の近くに置くと、蒸気で紙がふやけてしまうことがあります。書類や本など大切な紙製品の近くには置かないようにしましょう。
【事例メモ】
Sさんは、本棚の近くに加湿器を置いていたため、大切な本が湿気で波打ってしまうというトラブルに見舞われました。その後、加湿器を別の場所に移動し、本棚には乾燥剤を入れることで、問題を解決しました。しかし、波打った本までは元通りにならず大変ショックを受けたとのことです。
このような事例は当然といえば当然なのですが、意外と書類や書棚の近くに加湿器を設置される方が多いようです。紙の本や書類は特に大事なものが多いです。ショックを受けないためにも紙のものの近くに加湿器を設置しないよう注意しましょう!
お手入れのしやすい機種を選ぶ
加湿器は、内部に水を溜めて使用するため、カビや雑菌の繁殖を防ぐためのお手入れが欠かせません。最近では、イオンや除菌機能を搭載したモデルもありますが、完全にお手入れ不要の機種はまだ登場していません。加湿器を選ぶ際には、お手入れのしやすさも考慮することが重要です。
加湿器のお手入れを怠ると、水タンクや加湿器の内部にカビが発生し、健康にも悪影響となり、せっかくの加湿が逆効果になってしまいます。より簡単にお手入れができる機種を選び、適切なお手入れをおこない、ご自身はもちろん、家族の健康を守りましょう。
ネットショッピングのレビューやメーカーの公式サイトでお手入れのしやすさを確認するのも一つの方法ですが、可能であれば実際に店舗で本体を見て触れて確認するのがベストです。以下のポイントを参考に、お手入れしやすい機種を選んでください。
■内部が拭きやすい形状か
■洗浄する部分に手が届くか
■拭けない部分や洗えない部分がないか
■タンクの残水を捨てやすい取っ手があるか
■タンクを持ち上げやすい容量か
■台所のシンクで洗いやすいサイズか
■別途、お手入れ用アイテムが必要か
■タンクやフィルターに抗菌対策が施されているか
特に「超音波式」は、他のタイプよりも内部に雑菌が繁殖しやすいため、お手入れが苦にならないモデルで、小まめに清掃して使用できるものを選びましょう。
この章と次の章で使用している画像は、水タンクや本体に凹凸がなく最高にお手入れがしやい加湿器「RHYTHM 超音波加湿器 MIST350」です。こちらは別途記事を作成しますが、超オススメです。ぜひ、下記で確認だけでもしてみてください。
お手入れをせずに加湿器を使用するリスク
加湿器は乾燥対策や快適な室内環境を保つために広く愛用されていますが、使用方法(お手入れ)を誤ると健康リスクを招く可能性があります。特に注意すべきなのが「加湿器肺炎」や「レジオネラ症」などです。これらは加湿器内部で繁殖したカビや細菌が空気中に拡散され、それを吸い込むことで発症する呼吸器疾患です。
加湿器肺炎とは?
加湿器肺炎は、加湿器内部で繁殖したカビや細菌がミストとともに空気中に放出され、それを吸い込むことで発生します。この疾患は、特に免疫力が低下している高齢者や新生児にとって非常に危険で、重症化すると肺炎や気管支炎を引き起こす可能性があります。
レジオネラ症のリスク
レジオネラ菌は湿った環境で繁殖しやすく、加湿器の水タンク内で増殖した場合、空気中に放出されることがあります。レジオネラ症は、免疫力が低下している人々に特に深刻な影響を及ぼし、重篤な肺炎を引き起こすことがあり、レジオネラ患者の届出数も年々増加傾向にあります。
大分県で発生したレジオネラ症の事例
2018年1月、大分県の高齢者施設で、加湿器が原因となるレジオネラ症の集団感染が発生しました。この事例では、80〜90代の男性3名が感染し、そのうち1名が死亡しました。原因は、加湿器のタンク内でレジオネラ菌が増殖し、空気中に広がったためです。このような事例は、加湿器の使用時に適切な管理が行われていない場合に発生するリスクを如実に示しています。
過去の事例を教訓に、加湿器の使用に際しては、適切な管理と清掃を徹底し、健康リスクを最小限に抑えることが重要です。
加湿器の種類とリスク
加湿器のタイプによって、リスクの度合いは異なります。加湿器タイプの詳細については下記の記事にて解説しています。
超音波式 : 水を超音波で振動させてミストを生成する仕組みで、タンク内の水に含まれる細菌やカビ、カルキがそのまま空気中に拡散される可能性があります。適切なお手入れが行われていない場合、加湿器肺炎やレジオネラ症のリスクが高まります。
気化式 : 水を蒸発させることで加湿を行うため、超音波式に比べて細菌やカビの拡散リスクは低いとされています。しかし、内部に残った水が長時間放置されると、やはり細菌が繁殖するリスクがあります。
ハイブリッド式 : 温風を利用して加湿を行うことで、細菌の拡散リスクをさらに低く抑えることができます。しかし、タンク内の水が清潔でない場合、やはり細菌の増殖が懸念されます。
スチーム式 : 水を沸騰させることで加湿をおこなうため、細菌の拡散リスクは低くなります。それでもタンクの水は清潔な水を使用する必要があります。
レジオネラは60℃では5分で死滅するので、タンク内の水が加熱されるスチーム式やハイブリッド式の加湿器は、レジオネラ汚染のリスクが低いとされています。
本章における参考文献
レジオネラに関する情報
厚生労働省 レジオネラ症Q&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html
厚生労働省 レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針 (平成 30 年8月3日厚生労働省告示第 297 号により一部改正)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/rezionerashishin.pdf
加湿器は、乾燥対策としての利便性が高い一方で、適切に管理されていない場合、加湿器肺炎やレジオネラ症などの健康リスクを引き起こす可能性があります。特に、長時間放置された水がある環境では、細菌やカビが繁殖しやすく、空気中に拡散されるリスクが高まります。次の章で紹介する「お手入れの基本」を参考に、適切な管理と清掃を徹底し、健康リスクを最小限に抑えて使用することが重要です。
お手入れの基本
加湿器のお手入れは、付属の説明書に従って行うことが基本ですが、以下のポイントも押さえておくと、より快適に加湿器を使用することができます。
タンクの水は2日に1回交換する
→カビなどの菌の発生を防ぐ
ミネラルウォーターよりも水道水を使用する
→ミネラルが雑菌の繁殖を助長する可能性がある
→水道水は衛生消毒されており菌の繁殖を抑える
スポンジを使うときは柔らかい面で優しくこする
→プラスチックなどのデリケート素材でできているため
→水タンクにキズがつくと雑菌の繁殖場所になりやすい
長期間放置した汚れにはクエン酸水を使用する
→お湯にクエン酸を混ぜ、30分〜1時間浸け置いてすすぐ
洗浄後はしっかりと乾燥させる
→消毒用エタノールで消毒して再乾燥させると尚良い
多くの製品で見られることですが、水タンク内や水が溜まるところ(プール)に凹凸が多いものがあります。凹凸が多いと洗い残しやすく、そこにヌメリや菌が発生する可能性があります。加湿器を選ぶ際は、お手入れのしやすい凹凸が少ないものを選んでください。
まとめ
加湿器を効果的に使用するためには、設置場所の選び方とお手入れのしやすさが非常に重要であることをお伝えしました。花粉やウイルス、ハウスダストなどの対策にも加湿器が活躍することは下記の記事でもお伝えしたとおりです。
生活に欠かせない加湿器を適切な場所に設置し、定期的にお手入れを行うことで、加湿器の性能を最大限に引き出し、健康的で快適な室内環境を維持できます。事例を交えた設置場所の選び方や、お手入れのしやすい機種の選び方を参考に、最適な加湿器選びと設置を行い、一年を通じて快適な湿度を保ちましょう。